「…横になったまま、あなたのこと見ててもいい?」


ふわふわのブランケットが頰に触れてくすぐったい。

彼はさっきと同じようにベッドの縁に体を寄りかけている。



「どうしてか、あなたを見てると落ち着くの」



それに彼の声を聞くのも。

疲れか睡魔か、どちらかわからないものが、私の意識をふわふわと宙ぶらりんにさせる。


彼のそばにいるだけなのに、ささくれた心が小波のように落ち着いてゆく。


心地いい。



「アンタ、いつも俺ばっかり見てるな。この前だって…ーー」



声が少し笑っている。



そうだ。


私はあなたに会うと、目が離せなくなってしまう。


ずっとその美しさを追いかけてしまう。


唇の動きや、蝶の羽ばたきみたいにゆっくりなまばたきも。


そんな時間が心地よくてたまらないのだ。



「だってどうしようもなく綺麗だから」



自分の意思とは関係なくでた言葉。



彼は私の言葉には何も言わずにそのままそばにいてくれた。


だんだんと瞼が重くなっていき、気がついた時には、カーテンの隙間から朝日がキラキラと降り注いでいた。

部屋を見回しても彼の姿はもうなくて、
いつも通りの部屋が、朝起きた私を出迎えてくれている。



なんだか、また夢を見ていたような時間だった。