つつ、と彼の指先が私の喉元を滑り落ちて
痛みのある箇所で止まる。



「少し赤くなってる。冷やすか?」



心配そうな目。

私は首を横に振る。


どうしよう。

私こんな状況なのに、心臓がドキドキいいだした。


彼の優しさに飲み込まれてしまいそう。



「どうしてこの間は血だらけだったの?あんなに…強いのに」



気を紛らわすようにして話題を振る。



「…相手するのめんどくさくて。それにあんまり痛みとかわかんないんだ、俺 」



「痛みって、殴られたりしても?」


「まぁ。 物とかで殴られたりすると、流石にちょっと痛いけど」


「…これも?」



彼の端正な顔に手を伸ばし、頬をつねってみた。


思い立った自分の行動にハッとして、「あ、ごめん」と直ぐに謝る。



「痛くない」



なるほど。だからあそこまで血だらけに?
いやだからといって、それはそれで怖い。



私の顔を見た彼が、吹き出した。


喉の奥で楽しそうに笑っている。


綺麗さとは正反対に、笑った顔は子供みたいに無邪気で可愛い。



「それ、確認になってんの?」



頬をつねっていた私の手を掴みながら彼は言う。

可笑しそうにこちらを見る瞳は、相変わらず綺麗な色だ。