彼に言われて中身を確認する。


よかった。絵はそのままだ。
壊れたりなどはしていないようだった。

彼から受け取って、優しく胸に抱く。



「うん、この絵気に入ってるの。傷つかなくてよかった」



大きく息を吐くと、体の力が抜けたのか
先ほどの男たちの気配が、今になって私の体を震わせる。


掴まれていた肩と腕が少し痛む。



それに体がすっかり冷え切ってしまっていた。


自分では大丈夫だと思っていたのに、どうやらそれは間違っていたらしい。



「…じゃあ」



馬鹿だとわかっている。
だけど、このまま今日一人でいるのが怖い。

私に気をつかってからだろうか、
その場を立ち去ろうとする彼の袖口に手を伸ばして、ぎゅっと握る。



「…ご、ごめん…。お願い…まだ行かないで」



彼がどんな顔をしているかわからない。


足元を見たまま袖を握っている指先に力を入れると、しばらくして彼が小さく息を吐いたのが聞こえた。



「とりあえず、座ったほうがいい」



私の手を、彼はゆっくりと離すと部屋に上がるために靴を脱ぎ、そのまま私の腕を引いて中まで連れていく。

ベッドに私を座らせると、近くにあったブランケットを引き寄せて私を包むようにして被せてくれた。

冷えていた肌が、ふわふわに触れて少しだけ和らぐ。



彼が私になるべく触れないようにしていることが、その動きから見てとれた。



「アンタに絡んでた奴ら、天塚(あまつか)っていう高校。あの制服を見かけたら近づかないほうがいい。
最近ここらをよく彷徨いてるから」



薄いグレーのブレザーに、紺のチェックのズボン。

この前家の付近で見かけたのも、初めてこの人にあった交差点にいたのも、その制服を着ていた人達だった。



「ごめん」



ダイニングチェアに座った彼が、ぽつりと呟く。