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無色透明な日々にちょっとの楽しさを見つけただけなのに、どうしてこうもうまくいかないのだろうか。
神様は私が嫌いなのかな。
絵を描けば描くほど、どんどん彩からは遠ざかっていって、なにもない透明の毎日ばかりだ。
『出ていきなさい』
父の言葉が突き刺さる。
耳鳴りのようにそれはこだまし、足元の地面はどんどんぬかるみ、そして私を飲み込んだ。
真っ暗闇に1人きり。
ハッとして目が覚める。
夢だ。
嫌な汗をかいたからか、額に前髪が張り付いていた。
授業のあといつも通りにバイトに向かったが
途中で気分が悪くなり休憩室で休ませてもらっていたところ、どうやらいつのまにか寝てしまっていたらしい。
机に突っ伏す形で寝ていたからか、腕には机の角の跡がのこっている。
休憩室の外からは、部屋から漏れる誰かの歌声が響いていた。
時計に目をやると23時半を回っている。
もう上がる時間になってしまっていた。
重たい体を動かして、カウンターまで向かうと
だるそうに肘をついて携帯をいじっていた店長に声をかける。
「休憩ありがとうございました。すみません、ほとんど休んでて…」
「鷹宮ちゃん大丈夫ー?休憩のことは気にしないで今日はもう上がりなー」
携帯を片手に店長が心配そうな表情で肩をぽんと叩く。
店長の林さんという女性は気さくでいい人だ。
ネイルがとても長いのに、携帯をいじるスピードが私の倍くらい早い。
「ありがとうございます。お先です」
頭を下げると、ひらひらと手を振って挨拶される。
そのまま休憩室に戻って着替えを済ませた私は、車通りが減った夜道をとぼとぼと歩いて帰った。