通りで…。
毎回血だらけで、悪そうな奴らに追いかけ回されていた理由がわかった。
そんな危険な男を、自分の部屋に入れてしまっていたのか、私は。
去り際の彼の行動を思い出して、心臓がぎゅっとなる。
なのにどうしてだろう。
そんなに悪い人じゃないと本能的に感じている私もいるのだ。
「…てかそれ鷹宮の自画像? なんだ、持ってきてんじゃん」
カバンから少しだけ見えていた自画像のキャンバスを、野田が見つけて指差した。
「あっ…」
私が隠そうとする前に、野田にさっとカバンからキャンバスを取り出されてしまう。
「いや…これは…、そうだけど。…今日の合評に出そうとは…」
「思ってなくて」と、続く言葉がどんどん尻すぼみに小さくなる。
慌てて隠そうとしても、野田はそれを遮ってきた。
「へー…。鷹宮もこんな絵描くんだな」
私が描いたんじゃないけど…。
まじまじと自画像を見つめる野田に、それを馬鹿にしている様子はなかった。
「てか、これお前にめっちゃ似てるよ。目元とか特に」
出せばいいのに、と野田は屈託なく笑う。
「…ふふ、だよね。私も似てると思う」
「けど、これは出さないから」と、私がその自画像を大切に仕舞おうとした時だった。