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「ん…」
重たい体を起こすと、全身が汗のせいでぐっしょりと濡れていた。
曖昧な記憶を辿る。
あぁ、そう言えば彼女がここまで運んでくれたんだった。
しばらく眠っていたのか、締め切ったカーテンの外はもう薄暗くなっている。
ベタベタするシャツを脱ぎ捨てて、柔らかい生地の新品のシャツに腕を通した。
「あ…良かった」
驚いた。
リビングへ行くと、そこにはまだ彼女がいたからだ。
僕の顔色を見て安心したのか、ふわりと微笑む。
「葉月ちゃん、なんでまだここに…」
「そのまま置いていくのもなんだか心配で…。すみません勝手に…」
なんて馬鹿な子なんだろう。
バカで真面目で、とんでもなくお人好し。
「気分どうですか?これ、お水です」
「大丈夫だよ、ありがとう」
僕の体はクスリの副作用でたまにこうして、体がおかしくなる。
それなのに、何も知らない彼女は心配してずっとつきっきりでいてくれたみたいだった。
しばらく眠ったおかげで、体はもう軽い。
熱も引いたみたいだ。
「あの…、これ色々買ってきたので、良かったら食べてください」