静かに扉を閉じ、リビングに戻り一息つく。

彼の体重を支えながら歩いたもんだから、汗だくになってしまっていた。



「ふぅ…」



どうしよう、柳や由井くんに連絡して手伝ってもらったほうがいいのかな…。

救急車はいいって、本人は言ってたけれど、どう考えても病院に連れて行ったほうがいいくらい具合が悪そうだった。


スマホに手を伸ばし、柳への通話ボタンを押そうとしたところで手を止める。


ここで、本当に柳に連絡して良いのだろうか?


忙しいと言っていた彼に、迷惑はかけたくない。



「あー、もう」



迷った末にスマホの画面を閉じた。


大丈夫、私一人でなんとか出来る。

それに、しばらく寝たら良くなるかもしれないし…


扉を隔てた寝室からは何一つ音が聞こえてこない。


とりあえず水や食料でも買いに行こう。


私はそっと、音を立てずに彼の家を飛び出した。