「…やめてくださいよ、その顔」



私の顔がみるみる赤くなっていくのが面白いのか、鈴木さんはクスクスと笑っている。


恥ずかしくなって顔を隠そうとした手を、鈴木さんがゆっくりと掴んだ。

相変わらず、その指先は冷たい。



「そっか、残念」


「ざんねん…?」



残念とは…、一体、どういう…



「気にしないで。さっ、帰ろう」



そういって駐車場まで歩いた時だった。

前を歩いていた鈴木さんが、がくりと体制を崩し地面に倒れ込む。


口元を抑え、膝を付いた鈴木さんの表情は、苦痛で歪んでいた。


額に汗が滲んでいて、触れた体がとても熱い。



「ちょ…、鈴木さん、大丈夫ですか!?」



「救急車」と、焦ってスマホを取り出す手を、鈴木さんが遮る。



「…いい。ちょっと休めば治るから」



力なく笑ったその顔は、いつにも増して蒼白い。


そのまま鈴木さんを支え、彼の車に乗せた。

シートを少し倒して彼を横にさせる。



「私、水買ってきます!」



返事がないまま駐車場を後にし、急いで近くのコンビニに駆け込んだ。


水、それに念の為袋やタオルも。

目につく必要そうな物を手当たり次第にカゴに放り込んで、彼のいる車へと戻る。