「よくここへ来るの?」
黒色のシャツの襟元から除く蛇の頭。
その精巧に描かれたタトゥーの蛇を、思わずじっと見つめてしまっていた私に、彼は質問を投げかける。
「たまに…。本を借りに」
当たり前だ。
ここ、図書館だもん。
わけのわからない事を言ってしまった、と後悔する。
「僕もよく来るんだ。僕は鈴木 …、鈴木 ハルト。よろしく」と、握手を求める手が伸びてきた。
「た、鷹宮 葉月です…」
躊躇いながらも握り返す。
優しく微笑むあたたかな笑みとは裏腹に、握られた手はとても冷たい。
「そうだ」と、彼が思いついたようにいった。
「この前のお礼がしたいんだ。この後時間大丈夫?」
この前の…?
あぁ、傘のことか。
「いえ、大丈夫です…!そんな…」
と、遠慮する私の手を、彼は「いいから」と笑って強引に引き、図書館の横に併設されているカフェへと連れて行った。
目の前にコトン、とウェイターが運んできたカフェオレが置かれる。
それに加えて、ケーキまで。
連れられるがままに、来てしまった…
鈴木さんは足を組み、コーヒーの入ったカップを口へと運んだ。