「分かる?あの隙のない柳に、守らなくちゃいけない弱い存在ができたんだ。彼の弱みだよ。ただ一つのね」



「へぇ」と、笹倉は乾いた笑みを落とした。

どうやら嘘だと思い込んでいるらしい。



僕は胸ポケットから数枚の写真を床にばら撒いた。

そこには、1人の女の子が写っている。



「鷹宮 葉月。一人暮らし。どう?中々可愛い子を捕まえたもんだよね、柳も」



笹倉が写真を拾い上げた。

じっと、僕とその写真の彼女を交互に見る。



「…それで見返りは?何を企んでやがる」


「なにも。それはただのプレゼント」



僕からの餞別。



「もし勝てたら、何かお礼はよろしくね?」
と、僕は微笑んでその座を立ち去った。



笹倉は何も言い返してはこなかった。
静かに、僕の背中が遠ざかっていくのを眺めている。



柳 佐百合。

君の煌びやかな人生が終わるのも、あともう少し。


せいぜい今を楽しむといい。