「死ぬまで、尽します」

「いや不器用。ロマンチックに、一緒にいるよ、とか普通に答えてほしかったんだけど」


笑いながら軽くデコピンされる。痛いけど、どこか、優しい。そのデコピンすら、尊い。


今この瞬間も、優しい茶色い目に、吸い込まれてしまう。何度も何度も、私が欲しい言葉をくれて、私の名前を呼んでくれる人。


「朝くんが、好き、です。私を見つけてくれて、ありがとう。……私、朝くんのせいで、死にたくなくなっちゃった。死にたくない」


死にたくないって、胸を張って言えるほど人間は強くない。それでも今の私は、言わなければならないと思った。いや、言えたんだ。


今度は、私が朝くんの肩に顔を預ける。

彼の肩が少し上がる。朝くんは、強がりだ。

本当は、朝くんだって慣れてないくせに。

私はそうとは口にはせず、笑っていた。


「俺も、翠と死にたくなってよかった。死にたくないから、俺だって」


彼は、いたずらっぽくふっと笑った。


ああ、花火の音が鳴る。

どうか、鳴りやまないで。


暗闇に沈んだ深海で、何も感じなくなった私の胸には、今には大きく大きく、咲いている花火がある。そして、ある光の朝陽がある。


「花火って、こんな綺麗だったっけ」

「私がいるから、じゃない?」


気付いたら、彼の笑い方が移ったらしい。

私はいたずらっぽくふっと笑っている。



「おやすみ」



まだ、寝る時間じゃないでしょう?

そう言おうとして、私は息を飲んだ。


落ちてくる、桜色の唇。

花火じゃない。雷でも雨でもない。


ただ、私の大好きな、大切な、人である。


あなたの言う、おはよが好きだった。

同じように、おやすみも、大好きなんだよ。


「愛してる」

「私も、…愛してる」



雨のように落ちてくるその唇を、

綺麗な空と、夜に咲き誇る花の下で、

ただ、私は精一杯に受け止めていた。