ここの肩寝やすいわ、なんて彼はいたずらっぽく笑っている。慣れてくれない私の体は、びくっと小刻みに震えて冷や汗をかく。


―そこで、思った。


「…朝くんってさ、何も、思わない?」

「ん、なにが?」


声が近くに聞こえて心臓が爆発しそうだが、それでも平常を偽りながら、きょとんとする彼に続けて言う。


「いち、おう?私からしたら朝くんって……」

「あー、彼氏?恋人?」


行き詰まるワードを軽く言う彼に、顔が熱くなる。まずい、と隠そうとして頬を手で隠す。


「互いにベッドに侵入しないとか、私が、約束事とか勝手に決めちゃって…、朝くん何も言わないけど、何も思ってなかった…?」

「…」

「私って、全然彼女らしくない人だからなぁ…難しいなぁ…なんか、ごめんなさい…」


病気のため、病気のため…、それに思いが行きすぎたのかもしれない。それに、私が同居生活に慣れていなかったのもある。

朝くんのこと、何も考えてなかった。


「いいんだよ、別に」

「いいって…」


朝くんは、私の肩の上で、心地良さそうに目を瞑っている。今にも眠ってしまいそうだ。


眠れない朝くんはやっぱり、私がいたら、安心して目を瞑ることができるんだろうか。

私だってそうだった。

朝くんがいたら、安心して目覚められる。