すると、りんご飴やイカ焼き、私が食べてみたかったものが次々に出てくる。

私の目があまりにも目移りして輝いていたのか、彼は面白そうに笑って、食べ物を出す度に私の顔を伺っていた。


私は手に取って、りんご飴をかじってみる。


「顎痛っ…!めっちゃ硬い…」
 

思わず顔をしかめる。棒に刺さったりんごは赤くて、光ってもないのに、何故かキラキラ耀いて見えている。


「なに、初めて食べんの」

「ううん、そんなことは、ないですけど」


でもなんだか彼といると、1つ1つが新鮮で、全てが初めてのようになる。言葉にできないけど、それって、よくわからない。


「俺にも食べさせてくんない?」

「えっ、あ、はい」


逆に渡したつもりだったが、思い切りかじった部分をかじられて、少し、頬が熱くなった。









長く、小さな音がする。もうすぐ、大きな花火が打ち上がるんだろう。

周りの期待が夜に舞う花火の元に行き、暗闇に沈んだ夜空には、決して後悔させないような、光の花火を、咲き誇らせる。


「うわぁ…花火、きれい。全然ここでも見れるし、よかった」


遠くでは賑やかな歓声がする。人気のない静かな場所で、2人、花火を見ていた。

2人きり、なのが、胸が締め付け息苦しくなって、ドキドキする。同じ花火を見る彼も、私と同じ気持ちだろうか。


「夜、好き?」


唐突な質問に、どうしてそんなこと聞くの?なんて、言わなかった。聞かれた時に自信を持って、言いたいだけ。


「尊くて、やっぱり大切で、好きだと思う。朝くんのおかげで、目を瞑るのも、怖くなくなったし、夜は好き」

「…へぇ、やっぱ変わってない」


いつもは髪をくしゃっと撫でてくるはすだが、朝くんでも少々、このお団子ヘアには気を使ってくれているらしい。

そこが、どこか愛らしい。


「夜って、いい」


ポツリと夜の空気感に呟く。


「どんなに暗くて怖い夜が来ても、花火って、夜じゃないみたいで錯覚させてくれるくらいに、綺麗に咲いてくれるから、好き」


私はいつだって、朝が来ても眠っていた。でも、夜に上がる花火は家から見れた。


「これだから、暗い夜は好きになる」


カッコつけて言ってしまったことに気付いて慌てて彼の顔を見やるが、全く笑わずに、私の声を心地良さそうに聞いていた。


「なに、どしたの」


すると彼は、まるで猫のように、私の肩にごろんと顔を預ける。