朝くんの言うおはよって言葉は、私にだけくれる、言葉なはずなのに。
そうやって、ヤキモチを焼く私がいた。
でも、そんな自分が気持ち悪いなんてもう思わない。今は、自分の素直な気持ちを、ちゃんと、大切に、認めてあげる。
まあ、そんなこと朝くんに絶対言わないけど。
「あー笑える。可愛いな、ほんとに」
「…え、私?」
「ん?ひるに言ったんだけど」
確かに、ひるのかぶり付き具合に、思わず笑ってしまう。もう年はとってるはずなのに、ほんと、食べ具合やら暴れ具合がおかしい。
餌のカスが頬についてしまうひるが、米粒をよく顎に付けている朝くんと、どこか重なってしまい、気付かれないように笑った。
「ごめんごめん、ひる、可愛いや」
ちゃんと認めてひるを見ていると、「嘘」と、彼の声が、帰ってくる。
「さっきの、ひるにもだけど翠に言った。…可愛すぎて、もう、やばい、無理すぎる、」
その時、ぐっと私に顔を近付けてきた。
思わず離れて、キッチンを指差しながら「ちょ、東花いるから…!」と静かに声を出す。
朝くんはそんな焦りに焦る私を見て、「なに、顔赤い」とズル賢そうに笑っている。
「……あさくんって、女の子、口説くのうまそう」
女の子なんていうキーワードに興味ないらしい朝くんは、「あー」と適当な返事をする。
ああ、そういうとこ、ほんと大好きで。
また、惚れそうになるから、やめてほしい。
「でも俺、他ではこんなんじゃないから」
「…こんなんじゃないって?」
「真面目だし優しいし?クール系だし?低い声だして、大人っぽさ演出してるし?」
「うわあ…自分で言うとか嫌われるぞ…」
ぎょっときた顔をしてみると、彼は「だって、」と、これは完全に意図的に言ったことだとわかるようなことを、言った。
「興味ないから、翠のこと以外」
ずるい、ずるすぎる。意図的な嘘をつく彼に、今日もまた、惚れている私がいた。
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