出してきたのは、赤青い汁に、大きく切りすぎたジャガイモと固い固すぎる人参、そして噛むとコリコリカリカリする糸こんにゃく。
「に、…肉じゃが、です」
朝くんのことがこんなにも可愛らしく見えた瞬間は、多分、これが一番かもしれない。
「お、お肉は?」
「…買い忘れた」
「肉じゃが作ろうってなって肉買い忘れるって…そんなことある?」
「いやその、レシピ見てやったんだけど、キムチとか入れたら美味しそうだなって思って勝手に色々入れてたらこんなものが……」
結果、食べてみると今まで食べたどんなものよりも吐き気がする美味しさだった。イコール、吐き気がするほどあまりにも、まずい。
どうしてレシピ通りにやらないのかと疑問に思う点はいくつもあるが、それ以上、何も言わないでおいた。
出されたものは最後まで食べよう。その教訓を胸に、2人で頑張って食べた記憶がある。
食べた当の彼は、「意外にクセあってやみつきになる…」なんて意味不明のことを言いながら食べ進めていたけど。
家事なんかできない。
これが、私のお母さんについた嘘だ。家事ができないだけでも、大分お母さんには心配されるであろう。
節約のために外食もできないしと、考え付いたのは、周りに内緒で人に頼ることだった。
幼馴染みである彼が、東花は料理がうまいと言ったので信じて、頼んでみようとした。
おまけに東花は断れない性格だから、と彼は物知りの学者のように述べており、全くその通り、頼み込むと了承を得てくれた。