「家事も勉強もできるそうだし、優しくて真面目な朝くんならきっと大丈夫!!!今の翠があるのも、朝くんが起こしてくれたおかげだもんね。病気のことも、あるしね」

「まあ、うん」

「私も心配だけど、うん。翠が嫌だったら、いつでも帰ってきなさいね」


親元から早くに旅立っていく娘を見る、お母さんの目はどこか寂しい色に満ち溢れていた。私だって、寂しかった。


苦しいことも辛いこともあるけど、やっと慣れてきた今は、安心して日々を進むことができていると思う。


毎朝、彼の声を聞けて。

毎日、朝を迎えられて。

病気なんてないように、1日1日を、大切に尊いように、2人で進んでいる。


私は、勉強に励みながらバイトをして、彼のサポートもありながら志願した大学に合格した。

朝くんだって、有名な大学に進学した。


私に勉強を教える余裕なんてないはずなのに、毎日2時間の勉強時間を儲け、わからないところは教えてくれる。

私のお母さんに言った、「勉強も助ける」という約束を守ってくれているらしい。

彼は、嘘つきじゃなかった。意外にも、いつだって私の約束を守ってくれる人だった。


どんだけ優しいんだろう。勉強や用事で手一杯なはずなのに、彼は私に変わらない、笑顔と余裕っぽさで接してくれる。


毎日思っていたことを、言ってみた時がある。

私に構わないでいいのに。


「へぇ、俺のこと心配してくれてんの?別に心配しなくてもいいのに」


優しい目で、私を見つめて笑う。


「俺は、毎日を嫌に感じてた。1日をずっとループしてる感覚で吐き気がしてた。でも、翠がいたら、眠り方を思い出せる」

「…うん」

「昇ってくれる朝陽だって嫌いになる時もあるけど、好きになれた。全部、翠のおかげ」


私のおかげ…?それだったら、私だって…


「勉強くらいしかできないけどそれくらいだったらできるから、恩返しさせてよ、俺に」

「…なら私も、恩返し、したい」


強気に言うと、彼は「普通に翠に構うのも好きだからなんだけど」とどこか嬉しそうに私に言った。


互いに恩返ししながら毎日を生きている。