どうしてだろう。彼の瞳に映る私だけは、本当に、綺麗に見えた。情けなくても、一瞬一瞬を生きていれば、それでいいと思えた。


雨の音がする。窓の先のその雨は、どこかスローモーションに降り落ちていく。

夜だった。外は、真っ暗闇に包まれていた。


腕に全っ集中し、上半身を起き上がらせる。


全身に痛みが走った。頭が痛い。吐き気だってする。喉が痛くて息苦しい。胸が心臓が、身体中が痛くてたまらない…、


それでも私は、あなたなことを覚えていた。


「っおはよう、あさくん」


咳き込むことはなく、声が出せた。変わらない私の声は、低く、どこか寝起き声だった。

身体中の水分全部なくなるんじゃないかって心配するくらいに、朝くんは泣いていた。

声も出さず、ただ、静かに。雨の音が病室に響き渡っていた。


何も言わず、彼は、ぎゅっと私を抱き締める。


どうして、こんなに温かんだろう。どこか冷たい私の体は、すぐに、温かくなった。









「起きました」


病室の扉を開けて、廊下に言い放つ。

意味がわからず、ただ、ぼーっと見つめる。

何を、してるんだろう。廊下に、誰かいる?


きょとんとする私に振り返って、ふふ、といたずらっぽく彼は笑った。


その後の私は、抱きつかれ放題だった。