足掻いても足掻いても、掴めない水。空を切る手。動かない足。息ができず泡吹く口。沈んでゆく体。水が、身体中を浸透していく。

苦しい。痛い。辛い。ああ、息が出来ない。酸素を体が欲している。水には、酸素がない。吸っても、口の中に水が入るだけ。


「起きよっか、翠」


誰かの気配を感じて、はっと目を開ける。


「っ…」


彼は、私に近付いて―












私は、あなたがいないと起きれない。

私の体は、きっと、頑固で、寂しがり屋だ。

あなたじゃないと、目覚められない。

あなたの声を聞くと、心から安心する。


そう、そうだよ。

あなたは、私の運命の人。

そう思えたのは奇跡であって、運命の人。









あなたがいないと眠れない。

体は、夜に怯えた、ただの怖がりだった。

あなたといないと、安心して眠れない。

怖い夜も暗い夜も、淡くて脆い心を持つ夜も、眠り方を忘れてしまった夜も。

あなたがいると、心から安心できる。

ほら、運命をねじ曲げて、なってやったでしょ?あなたの愛する、運命の人に。


ねぇ、届いた?





゜ 




それでもずっと、待ってるから……