どことなく、安心する。

あなたの声を聞くと、心が安らぐ。

低くて、雨みたいに降り落ちる、優しくて、私が求める、世界で1番、好きな声。


医者が言っていた、8億人分の1人。


それは別に、運命の人ってわけじゃない。自分が、運命と思えるかどうか、安心できるかどうかだった。


ほんとは、あの橋で出会った時から好きだった。どんどん、好きになっていった。

おはよってかけてくれる言葉の優しさも、見せてくれた朝陽も、あの優しい笑い方も、私のために怒ってくれることも、雨の音を、あんなにも綺麗な顔で聞く彼も……


私は、夢の中にいた。


何もない、水の中に沈んでいた。

ここは、私の、まどろみの世界。


「そこにいるの、…やっぱり朝くん?」


私は沈んでいく。

気配はする。

いつもと同じだ、霞んでいて姿が見えない。

いや、いつもと違う。誰かの姿は、見えた。


「っあ……」


どうして、驚くんだろう。

私の予想していた人は、当たっていたのに。


だって、泣きたくなるほど、優しい顔をしていたから。目を細めて、私を見つめていたから。


一緒に沈んでいく。深い深い先の見えない暗闇へ、どこまでも、どこまでも。

真っ暗闇で息ができなかった深海の世界には、優しい光が差していた。その光を手で掴もうとして、空を切った。


―その瞬間、息ができなくなる。


「っぅぐ…」



まるで、水の中にいるみたいだった。