【said sui】


私の方こそ、一目惚れだったのかな。









「何する気ですか?」

「離してください、死ぬんで」



あなたがあの橋に、手紙で呼んでくれて。

私は、その時も笑っていた。


何もかもがどうでもよく見えて、お母さんの心配する表情も見飽きて、嫌われている陰口が耳に入ってくる度に、息苦しかった。


友達にも言えなくて、ただ、繕って繕って、「大丈夫」としか言えなかった。

いつしか感情を押し殺してしまった。

何も感じられなくなって、ただ、笑うことしかできてなくなって。

だからかな、

あの橋を見て、猛烈に死にたくなった。いや、猛烈じゃない。ただ、あー死のっかな、なんて軽い気持ちだった気がする。



「無理っすね」



あの時も、雨が降っていた。

優しくなんかない、強い強い、どしゃ降りの雨だった。そんな雨の中、黒い傘をさした彼は、私の腕を離さなかった。

どうして止める?ただの偽善者野郎だと思ってた。でも、そんな綺麗事とは全く違った。

ただの、欲望で。彼が私と死にたいってだけで、私は死を止められていた。

はぁ?と私の苛つきを加速させる彼に、ただ、嫌気が差してたのかもしれない。



でも、でもね。

今は猛烈に、あなたと生きたくなっている。

あなたのいる世界で、生きたいと思ってしまっている自分がいる。本当に、どんだけワガママな奴なのかと叱ってほしい。