【said sui】
私の方こそ、一目惚れだったのかな。
゜
゜
゜
「何する気ですか?」
「離してください、死ぬんで」
あなたがあの橋に、手紙で呼んでくれて。
私は、その時も笑っていた。
何もかもがどうでもよく見えて、お母さんの心配する表情も見飽きて、嫌われている陰口が耳に入ってくる度に、息苦しかった。
友達にも言えなくて、ただ、繕って繕って、「大丈夫」としか言えなかった。
いつしか感情を押し殺してしまった。
何も感じられなくなって、ただ、笑うことしかできてなくなって。
だからかな、
あの橋を見て、猛烈に死にたくなった。いや、猛烈じゃない。ただ、あー死のっかな、なんて軽い気持ちだった気がする。
「無理っすね」
あの時も、雨が降っていた。
優しくなんかない、強い強い、どしゃ降りの雨だった。そんな雨の中、黒い傘をさした彼は、私の腕を離さなかった。
どうして止める?ただの偽善者野郎だと思ってた。でも、そんな綺麗事とは全く違った。
ただの、欲望で。彼が私と死にたいってだけで、私は死を止められていた。
はぁ?と私の苛つきを加速させる彼に、ただ、嫌気が差してたのかもしれない。
でも、でもね。
今は猛烈に、あなたと生きたくなっている。
あなたのいる世界で、生きたいと思ってしまっている自分がいる。本当に、どんだけワガママな奴なのかと叱ってほしい。