「時間は止まらないから、生きるしかない。皆同じで、追い付けない今を、必死に生きてる」
怖くて、辛くて、息苦しくても。2回目の桜だとしても、あの男の子が退院しても、考えれば考えるほど苦しくなっても…、
「時間なんか追い付けなくていい。一瞬一瞬を、ゆっくり、自分のペースで、懸命に、生きたらいい。俺は、そうすることにする…」
彼女にもらった言葉、壊れるくらいに下手くそな笑い方…、俺の中の彼女との記憶は、いつだって、色付いた鮮明な世界で生きてた。
俺は、変わったと思う。
頭がおかしくなってた俺を変えてくれたのは、紛れもなく彼女だった。
別に、特別話が面白い人ってわけでもないし、上手でもない。むしろ彼女は、どうでもいい、が口癖の口下手さんだった。
それでも俺は、彼女の声を聞くと安心する。普通の女子よりちょっと低くて、優しくて。
雨みたいにストンと降り落ちて来る、朝陽のように温かい、光の声だった。
溺れていた俺を、足掻きもせずに笑ってた俺を、変なこと言って笑ってる俺を、いつだって手をひいて笑ってくれた。
頭痛が来て、それでいて涙が溢れる。彼女の手を頬に寄せて、ぎゅっと握る。