「っ俺だって、あなたのことが好きですって……伝えればよかった……」
その瞳を忘れても、どれだけ時間が経っても、色褪せないものが世界には溢れている。
溢れんばかりの涙が溢れて、頬を通りすぎていく。下に落ちても拭わずに、ただ、雨の中、愛を伝えていた。
雨の音が弱まっていく。
「あ、雨が…」
止んでしまう。止んでしまう前に……
目を瞑る彼女に、こんなに話しかけて意味はあるのか。それでも、足掻くんだ。足掻いて足掻いて、水の泡にでも消えたらいい。
そう、自信を持って言えたから。
「くま深いとこも、優しいけど不器用で、ほんとは頑張り屋で、笑って繕ってばっかなとこも…すぐ死にたいとか言う癖も……」
手をぎゅっと握りしめる。
「愛してる…」
その時、彼女の瞼が、ぴくりとする。
今、動いた―?
起きる。絶対に、目を開いてくれる。
「生きる意味なんて、空見たいとか雨が好きとか、死にたくないからとか。そんな、単純で、しょうもないものでいい…」
溺れてしまうどうしようもない彼女を、俺が、救い出してやる。
「自分は起きなくていい存在、自分はいなくても周りの人は幸せ、何のためにここにいるのか、わからなくなる。俺だって、誤魔化してたけど、同じで………」
精神が安定しなくなって、人が憎く見える。昇る太陽に、苛つくようになった。
「後悔しないようにして、人に嫌われたら終わりだと思って。笑顔を作って、壊れるくらいに猫を被って、朝が来るのが怖くなった」
夜を好んで、朝を憎んでいた。
「気付いたら、重度の不眠症になってた」
眠れなくて、眠り方を忘れて。
何もかもどうでもよくなって、イライラして、どうしようもない心に満たされなくて。
人を傷つけた。今にも残る、深い傷を。