―は?考えんなよ。
首を振っても、自分の中の悪魔は消えない。
あんなに言って皆を病室から追い出したりして、俺は、何の役にもたたなかったらどうする?皆に合わす顔はある?
ピ、ピ、ピっ…の音が止まった瞬間、自分は、どれほどのショックを受けるんだろう。
情けない自分を嫌になり失望して、俺は、どうなるんだろう。
心配や不安はある。自信も何もない。この先のことなんか、何にも考えてない。
…それでも、人は、昇る太陽のために、最後まで頑張れる生き物だと思うから。
どう思われるかなんて、どうだっていい。
情けなくていい。足掻いてみせたらいい。
俺の太陽は、朝陽は、……
「翠」
彼女が眠りについて、俺は初めて彼女に語りかけた。怖くて、自分の声は震えてた。
俺は彼女の左手をぎゅっと握る。
丸っこくて可愛らしい指をしてたはずだけど、痩せ細って、骨が見えてた。
俺の冷たい手を、いつだって温めてくれた彼女の手は、今度は俺の方が温める側になるほどに、冷たくなっていた。
それでも僅かに、彼女の体は上下に揺れている。まだ、生きてる。息してる。その冷たい手をぎゅっと包み込む。
彼女がいなくなったら、有名人でもない彼女は、大きく報道されることもなく何ら変わりなく世界は続いていくんだろう。
彼女が眠ってる間も、そうだったように。