「ちょ、何して…」
「最後に、俺に足掻かせて下さい」
皆が俺を注目する中、後ろの、ピ…ピ、ピ…と音が段々と遅く、弱くなっていく。
やばいもまずい、も何一つ言わず、医者は、はっとした顔で固まっていた。
「最後です。息を引き取るまで見守るくらいなら、出てってくれていいでしょ?どうせ、こうしてても起きないんだから」
意味がわからないと思う。それでいい。死を前にこんなにも堂々としてる俺はおかしい。
黙っていた彼女の母親は、俺に近付く。
「起こしてくれる…?翠を……」
周りの人も、堪えきれないように泣いていた。卒業式だったろうに、彼女と同じ制服だった人達だって沢山いる。
彼女は、十分すぎるくらいに、大切にされていたんだ。
笑って繕ってばかりで、死んだ目をしていた彼女は、自信がなかっただけ。自分を諦めてた。…それでも、愛されてる。ただ、近くにいる大切な人に気付けてないだけだった。
「っ起こせるんですか?姉ちゃんを」
弟さんに、俺は、深く頷いた。
「俺が、運命変えてやりますんで」
何度も何度も夕は頷いて、何も言わずに病室を出た。そのまま、1人、また1人と病室から出ていく。最後に残ったのは、医者だった。