「俺が起こします」
夕は少し驚いたような表情をして、母親は首を横に振っていた。
「朝くんは優しいね、ありがとう。翠は、あなたのこと大好きだったね……」
他の人に四つ葉のクローバー渡してとか言ってたことを思い出す。そんなこと、しない。俺は、彼女と生きることを、諦めない。
彼女が足掻いても駄目なら、俺が、恥ずかしいくらいに足掻いてみせる。
「姉ちゃん、姉ちゃん…!!!」
強引に病室に入り込むと、何度も何度も、涙ながらに震える声で体を揺らす、彼女の弟がいた。
彼女の瞼は、微動だにぴくりともしない。同じ表情で、瞼を閉じてる。
近くにいた看護師や医者も、ただ彼女を見守るだけしかできずにいるようだった。
「みなさん、出ていって下さい、ここから」
柚、小鳥さん、夕、彼女の家族たち、医者、看護師、彼女と同じ学校の制服を着た人だって、知らない人だって、俺に注目する。
「君は、誰かな?」
長めの沈黙を破った医者は、俺を宥めるように言う。
「どうせ、こうしてても何も変わらないんで。病室から出てって下さい」
夕が「もういいって」と止めに入るが、それを振り払って俺は彼女の酸素ボンベを取り外す。