「ねぇねぇあたし可愛くない?一応夜野くんのために垢抜けとか頑張ったんだけど~」
アイシャドウが過ぎる目から、キラキラ眼差しが眩しくて、薄く目を開ける。
上目遣いしてくる柚に、「…どうも」とだけ返した。
「冷たっ!夜野くんの性格掴めないわぁ…。あ、好きな子には…みたいな感じ?うわぁ~夜野くんのそゆとこ大好きすぎる」
勝手に解釈されてるけど、もう何も言わなかった。柚は、「でもさ、」と少し改まったように俺に目を向ける。
「あたし、応援してるよ」
「…なにを?」
「夜野くんと翠のこと~」
ふふ、と笑う柚に俺は思った。
睡眠状態に陥ってる今の彼女の姿を見た時、柚はどんな反応をするのか。今の軽い笑顔でなんて、いられるわけない。
軽い気持ちで誘ってしまったけど、確かに考えれば大半の人は彼女の姿を見て涙を流してる。
…柚を連れていくのは、ちょっと、よくなかったかもしれない。説明もせずに俺ってやつは…
「痛っ…」
頭痛がする。すぐに薬を飲んで落ち着かせるが、痛みはまだ続いてる。
「大丈夫?」
「…何でもない、大丈夫」
自分の病気のせいだ。何日も何ヵ月も寝ていないのだから、体の免疫が弱くなるらしい。
ちょっとでも何かを考えると、痛くなった。
「あたしは、夜野くんのこと好きだけどね。もう、一生、会えないね、たぶん」
少し寂しげに眉を下げる柚に、頭痛がする頭を置いて、俺は言った。
「返事返しとくから」
スマホを手に取って、あるものを送る。
「な、なにこのスタンプ!!が、頑張れスタンプ?はぁ!?最低じゃん!!」
「うるさいうるさい」
うさぎがポンポンを持って応援してるスタンプ。俺は、柚に注意してふっと笑った。彼女にも同じスタンプを送ってやった。