「朝だって色々あるもんな、悪かった」

「…夕、なんでそんなに」


こんなにすぐに、怒る人だったっけ。もう、何ヵ月も会っていなさすぎて、どんな人だったのかも、記憶が薄れてしまってきてる。


「フラれてんだよ、翠に」


しばらくフリーズしていた俺は「は?」と驚きの声が漏れる。彼女の方に目を向ける。


「夕が告白?したってこと?えっ?」

「告白っていうか…その…気持ちを…、そしたら、ありがとって言われて終わって…」


夕の横顔は、真面目で、それでもちょっとだけ頬を赤くしている。そんな彼の顔を見て、堪えていた笑いが溢れてきてしまった。


「なに笑ってんだよ殺す。てか俺、お前のこと嫌いなんだった」

「いや…っそんな告白通るわけないのに」

「は、うるさい。キモいから失せろ」


なんだか、久しぶりに笑った気がする。俺もあの時の彼女のように、もう全部どうでもいいって、最近は思えてきてしまってたから。

夕も何故か、笑う俺を見て笑った。何10年も見てきた笑顔は、依然として変わらない。


「だから、」夕は続ける。


「朝には翠のこと、大切にしてほしい。…俺だって、翠に早く会いたい。知らなくて病室には来るの遅れてこんなこと言えないけど、絶対、翠が起きた時には、」

「わかってる」

「幸せにしてほしい」


夕は俺の肩に手を置いた。夕がもし、彼女のことをまだ諦めていないならそれはもう残念。…だって、彼女はもう俺の…