俺は、父親に怪訝な目を向ける。


「朝を見てたら、わかるんだよ」


茶色い瞳は、俺を映して彼女を映した。


「自分は苛つくくらいに朝が来て、満たされず、自暴自棄になってもおかしくないはずなのに…それでも一向に起きない彼女を恨まず、毎日、毎日と病室に通って」

「…」

「来る度に彼女に会えずに傷つくのに、それでも、光を追い求めるようにここに訪れている。朝陽なんだよね、互いに。…一応あなたの父親だから、それくらいわかるんですよ」


ふふ、と笑った父親は、病室を後にした。


彼女が、俺の、朝陽―


世界には、尊く大切な、当たり前のように昇る朝陽があったりする。

でも、俺の中の朝陽は、昇ってくれない。

だから、ずっと待ってるんだよ。俺の、俺だけの朝が見れる日を。

昨日のことのように思い出す。


―朝くんのことが好きです…

―最後に、抜け駆けさせて…


「これ以上、好きにさせんな……」


今日も眠れない俺は、今日も朝を待っている。