「毎日毎日どこへ行ってるのかと思いきや…天塔さんの病室だったのか。…会いたいんだね、天塔さんに」

「会いたい」


これだけは曲げない。それくらい、強い意思だった。病室の窓から冷たい風が入り込む。


「そんなに朝が自信を持って言えるとは」


いやぁと父親は、どこか遠い目をして頭を掻く。俺は、何か照れ隠しのように立ち上がって病室の窓を閉めにかかる。


「この人と話した夜は、眠れる」


顔は見えないけれど、父親の「ええっ!?」という声が後ろから聞こえる。


「じゃあきっと、朝も天塔さんを起こせるね」


何故か確信したように言う父親に、気付かぬ内に「えっ」と声が漏れてた。思ってもいない返答だったから、驚いた。


「聞いてるかな、天塔さんの病が改善される、たったひとつ、奇跡の方法を」


にこっと笑いながら、父親は人差し指を立てる。「知ってるけど」と呟いた。彼女は、浅い呼吸を繰り返しながら瞼を秘めている。


「朝が自覚してなくてもね。…天塔さんからしたら、朝は、天塔さんの世界に光を灯してくれる、朝陽だったんだよ、きっと。だから、朝だって天塔さんが朝陽みたいな存在なんだろう?無くては、ならない人」


は?意味がわからない。

どうしてそんな知った口をして言えるのか。何も知らないくせに。わかんないくせに。