彼女が眠った翌日、晴れた日の午後3時頃。


―ガラッ


扉を開けると、4、50代くらいの女性が気付いて優しい眼差しをこちらに向ける。茶髪がよく似合った、ボブくらいの髪の人。

俺を見た瞬間、大きく真っ黒な目は細まる。


「こんにちは」


促すように隣のパイプ椅子を勧める。軽く会釈をして、女性の隣に腰を下ろした。

誰だかすぐにわかった。茶髪、真っ黒な目、優しい笑み、声だって…所々似ている。


「えと、彼氏さんかな?いや、違う?ん?」


思わず笑ってしまいそうになる。口調も、どこか考える仕草も似ている。


まあ、彼氏じゃないよな、まだ。


彼女が今目の前で起きていたら、自信を持って言ってやって、彼女の顔を赤に染めてやりたかったな、と惜しく思った。


「まあ、友達以上のやつですかね」

「恋人未満、みたいな?」


そんな感じ?、と曖昧に頷くと、女性はパーッと顔を明るくして「あの子もそんな青春を」とおかしそうに笑っていた。

自分の子供が未知の病を患い、いつこの目を覚ますのかもわからない状況の中で、どうしてそんなに笑っていられんだろう。

どこか不思議そうに彼女の母親を眺めていると、こちらに気付いて「やめてよ」と笑う。


「そんなにイケメンに見つめられたら照れるなぁ。ふふ、翠がこんなイケメンとねぇ」

「…似てますね」


昼寝のように眠る彼女と母親を交互に見る。