ただの一目惚れだった。


なんとなく死にたくなって、じゃああの人が死ぬなら俺も死のーっと、なんて軽い気持ちだった。

不法侵入して手紙を入れて。今思うが、その時は頭がおかしくなってた。まあ、彼女は俺の夢を、受け入れてくれるものだと勝手に思ってた。死にたそうな目をしていたから。


橋に行ってみると、橋から飛び降りる寸前だった彼女の腕を掴んで、止めた。


「離してくれます?」


そんなことを崩壊しそうな笑みを浮かべて言う彼女に、「無理っすね」なんて言って、死なせないように止めていた。

ひとりで死なせない、一緒に死ぬ。そんな思いで俺は彼女の死を止めていると思ってた。けど、今、思う。それはきっと違った。


最初からそうだった。今もそうだ。

彼女と死ぬのが夢なんじゃない。

彼女と生きていくのが夢だった。


よく、わからなくなる。自分はどうして、彼女のことを待つのかな。

いつ起きるかもわからないのに。忘れてしまうかもわからないのに。自分のことをどう思っているのかもわからないのに。

ただの淡い期待を込めた、頭のおかしい俺からの一目惚れの告白みたいなものだったのに。