―ねぇ、朝くん。


私は、どこか必死な彼の表情に問いかけた。


私には、わかるんだ。

もう目を瞑れば、私が終わるってことが。


「…っんなこと、俺がするわけないだろ?」

「あれ、朝くん怒ってる?」

「笑うなって…死んだように笑う翠さんじゃなくて、俺は、生きたように笑う翠さんがのことが…大好きなのに……」


崩れそうな私と、崩れる寸前の朝くん。同じだったんだ。

私は、強引にベッドに横になって、朝くんに寝顔を見られるとか嫌だからって、パイプ椅子に座る朝くんに背を向ける。眠る準備だ。


「眠たくなってきたからさ」


雨の音がする。雨は収まってきたようで、止みそうだった。


「ばいばい、おやすみ」


おやすみって、こんなに、辛かったっけ。


目を瞑ろうと、瞼を半目閉じたところで、黙っていた朝くんが、言った。


「…ギネス記録」

「え?」


思わず、朝くんの方を見る。崩壊しそうな目で、彼は笑っている。


「ギネス世界記録、更新しちゃおう2人で。俺と、翠さんで」

「うん…わかった…約束…」


ポロポロと、涙が溢れてきた。

朝くんと出会ってからの私は、本当に、泣き虫だ。でも、それでいい。

そんな自分だからこそ、彼は好いてくれた。だから、自分を少しでも、好きになれた。