夜だった。
朝くんも私も、時間については触れなかった。この部屋に時計はない。もう窓は真っ暗で、それだけが、時を示している。
「ねぇ、翠さん」
思い出せてよかった。そう思えた。
「次は、いつ会えんの」
なんで、こんなに…
胸が痛くいたくなるんだろう…
「…朝くんは、いつ、会いたい?」
「…俺は、いつでも待ってる。でも、寝れない病気が、重症になってきてるから」
「じゅ、え、だ…大丈夫?」
「あーいや、正直やばいかもしれない。もう、5ヶ月寝てないから」
ご、5ヶ月も…?言葉に詰まった。
「頭もなんか回らなくなってきて、最近、学校休むようになっちゃってきてるけど」
「そっか……」
「翠さんと話した夜は、眠れるんだけどな」
彼は、静かに窓を見やる。
窓際には、一回り小さな四つ葉のクローバーがあった。
朝くんは、その間、病院の裏にまで新しいクローバーを取りに行ってくれていたらしい。
ほんと、運のいい人だ。意外と近くにあるもんだ、なんて彼は言っていた。四つ葉は、窓から入った雨水に、漬けるだけにしといた。
「ほんとは、翠さんのこと恨んでた」
恨まれて当然のことを、私は朝くんの前で何度もしてきた。
それでも追いかけて、私をいつも救い上げてくれていた。いや、そんなカッコいいヒーローみたいに、救って助けるんじゃない。一緒に、溺れてくれるように、助けてくれた。