「その、言葉が。なんか大袈裟で、人生経験したおじいさんが言うようなものっていうか…」


いや普通でしょ、とどうでもよさそうに鼻で笑う朝くんは、それでも少し嬉しそうで。


ああ、笑ってしまった。

その後、なんで笑うのかと怒られたけど。


病室につき、私は頭を下げて謝罪した。


「…勝手に、部屋出て行ったりして、謝ります、ごめんなさい」

「いや、俺の方こそ悪かったから」

「ううん、朝くんは、悪くない」


全部私のせいだ。本当は病気のこと怖いのに嘘を付いたんだ。

首を振ったが、彼のある発言によって、首を振れなくなった。


「俺がクローバー盗んだんだから」

「は?盗んだ?…やっぱり、朝くんかよ」

「えーなに、翠さん怒ってんの」


かわい、なんて言う朝くんに笑えなかった。


「盗みって、犯罪ですけど」

「わかってるわかってる」

「わかっててやった?1番ダメなやつだ」

「そーそ。どうせ四つ葉の安眠グッズないと寝れないだろうから、盗みを働いた俺のこと探すだろうなぁって思って、盗んじった」

「なにが盗んじったですか?なにふざけてんの?ほんと、クズですね……」

「ふふ。やっと笑ってくれた」


どうしてだろう。私は、起きてから笑っているはずだ。なのに、なんで?


「誤魔化して、作って、笑ってる翠さんが好き。崩壊しそうな目して笑ってたのに、でも、もう今は、ちゃんと生きてる目に戻った。俺は、生きてるその方が好きになった」

「…別に、生きてないから」

「あ、また死んだ目に戻った」


私を覗き込んで、朝くんはくすりと笑った。