「大丈夫?」


私は、優しい笑みを浮かべる。浮かべるんじゃない。作って、相手を安心させるんだ。

小さな目線に合わせてしゃがむ。男の子は、泣きじゃくって腫れた目をまた擦る。


「だれ…?」

「えっと……翠、です」

「すいちゃん…?」

「あ、うん、そう」


頷くと、男の子は、少し安心したように口元が緩ませる。


「どうしたの?お母さんいない?」

「うん…はぐれちゃったあ…」

「どうしよっか。迷子センターとか…いやあるのかなぁ…夜だし閉まってるかな…」


ネガティブ発言の連発した私のせいで、男の子の目がまたうるうるし始めていることに気付く。思わず「違う違う!」と否定する。


「大丈夫、大丈夫だからね。はい、大丈夫のおまじないかけるから」


人差し指をくるくる回して、男の子に指先を向ける。男の子は嬉しそうに、深く頷いた。


「とりあえず、受付のところ行ってみようか」


小さな手を握る。ぷにぷにしてて、とても可愛らしい。心細かっただろう。こんなに人がいてこんなに大きな病院で、辺りは暗くて。

別に、ヒーローになりたいわけじゃない。でも、どこか誇りを持って進めてる気がした。



「あの、えっと、この子迷子でして…」


もう診察時間は終わったが、受付の人はまだいた。男の子を見た瞬間、はっとしたような表情をして受付のお姉さんが駆け寄る。