大きな病院を早歩きで何周かした。精神的に病んでいるのかと看護婦さんに心配されたが、「人を探してるんです」、と説明した。

疲れた、息が苦しい。なんで、私がこんな思いを。どうして私は、クローバーを返してほしいの?あんな草、捨てとけばいいのに……


―うちの看護師も僕も、なんだか変えられなくて。


あの医者は、何が言いたかったんだろう。どうして変えれなかったんだろう。

私が手放したのだ。朝くんも、四つ葉のクローバーも。きっとどちらとも、待っていてくれたのだろう。それを、私は踏みにじんだ。

別にいい。何も思う必要はない。

でも、あのクローバーがないと夜を越せないような気がし―


「ぅえ~ん…」


小さな子供の泣き声が聞こえた。歩いていた足を止める。小さな男の子が、辺りを見渡しながら、泣いていた。


ひとり?迷子?親は?はぐれた?

でも、もう夜だ。診察時間は過ぎている。私と同じ、入院患者の子供だろうか…?


他に人は通るが、皆、無視して通りすぎていく。うるさいとまで言いたいような目をしている人もいる。

どうしよう、どうしよう…

なんでこんなに、意気地無しなんだろう。こんな自分が嫌になる。私じゃなくても、助けられる人はいる。男の子が泣いている理由も、迷子なんかじゃないかもしれない。

それでも、やっぱり、私は……