雨に打たれる。
私は朝くんに、にっと笑ってみる。
「外は、雨が降ってる。私の勝ち」
「は?晴れてるじゃん。朝陽見れたし」
傘も差さず、降りやまない雨に笑った。
「んじゃー」
桜色の唇が開いた。
空を仰ぎ、頬についた涙を雨に流す。雨が目に入ってきて、思わず目を擦った。
「ふたりの勝ち、だ」
片目を瞑りながらも、今度は私が口を開いた。彼は頷いて、悠々なる空を見つめていた。
「あーあ、俺の指示に従ってもらいたかったのに。なんで晴れてんのに、雨降ってんの」
「最悪」なんて悔しそうに唇を噛む朝くんに、一体何をしようとしてたのか気になって聞いてみた。すると、悩ましそうに「んー考えてなかったけど」と顎に指をつけた。
「内緒」
「なんか、…変態だ」
真顔で言うと、「なんでだよ」というツッコミが返ってきた。どんな想像をしていたのか計り知れなくて、笑ってしまった。
「でも、やっぱ俺の言う通りだったでしょ?ほら、朝陽見れたし」
「…雨なのに朝陽なんか、絶対見れないと思ってたのに。狐の嫁入り現象起きて、朝陽見れるとか。天気でも操れるの?」
「あーもしかしたらそーかも?」
意味深に彼は笑っていた。もっと誉めてよ、とても言いたげに私を見てくるので、私は無視して思い切り、顔を上げて空を仰いだ。