不思議と、強力な睡魔はやってこなかった。流石に1週間も寝たからだろうか。

雨は、静まることなく振り続けていた。真っ暗闇に包まれる空を、じっと見つめる。

気まずくもなくて、雨の中の音だけがする静寂というのも、悪いものじゃなかった。


すると、空にあった厚く暗い雲がなくなってきた。夜の色に染まりきった空は暗くてよく見えないが徐々に、空が晴れてきたらしい。


それでも、雨の音がする。

雨は、降り止むことはなく、降り続ける。


これ、なんていうんだっけ。

狐の、嫁入り…


―その時だった。


真っ暗闇の空に、一筋の光が差した。

ピンク色のような淡い光が差す。それからオレンジに光る空の色、そして、青い空の色。徐々に変化していく、空の色と表情。

丸く大きい太陽が顔を出していた。眩しくて直視できない。冷えた体が温かい光に包まれていくように、ふわりと浮く感覚がした。

空全体に光が満ちていく。あの暗闇の空は、気付けば、どこにもなかったのだ。


皆、忘れていく。この朝陽の、美しさを。

誰にも真似できやしない、この太陽の光を。


「きれい……」


ポツリと呟いたと同時に、目から暖かい何かが溢れ出てきてしまった。


「…俺は、朝が憎くてたまらなかった」


私も、私もだよ。心のなかで叫んでいた。

朝が憎かった。朝を迎える人が羨ましくて、朝をずっとずっと、憎んでいた。