「…朝陽、ほんとに来るのかな。この空に太陽が昇るなんて、嘘みたい」
真っ暗闇に閉ざされた、深い深い空が広がっていた。大雨で、少し風も強くなってきた。
夜って、なんだか怖かった。
朝なんて来なくていい。ずっと、そう思ってた。でも夜は、何かに世界が呑み込まれていくようで、ずっと怖い。
もう、朝なんて来ないんじゃないか。
このまま、暗闇の世界に閉じ込められてしまいそうで、ずっと怖かった。
「怖いの?」
心配してくれているようで、私の手を握ってくれた。その手は、私よりも大きくてとても冷たいけれど、温かかった。
「うん、まあ、ちょっと」
「当たり前に朝陽は来るから」
「…うん」
「大丈夫、大丈夫。ちゃーんと、この空にだって光は灯る。だいじょーぶ」
朝くんは、太陽みたいに優しく笑った。
私は今この瞬間、この夜でひとりきりじゃない。隣には、朝くんがいる。そのことが酷く嬉しくて、なんだか泣きそうだった。
また目うるうるしてる、なんて言われそうで、私は「眠いなぁ」なんて言って隠した。
「眠いんなら、俺が寝させないから。ほっぺでも引っ張ろっか?」
「…いやわかってる。眠くないから別に」
私の頭を、また猫のように撫でてくる。
ぎゅっと握ってくれる彼の手は、いつだって冷たい。震えているように感じて、私はしっかりと握り返した。
私は、朝を待っている。
今この瞬間、待っている。