「なんか毎回とってあげてる気がする。また、猫とたわむれてたりした?」

「当たり」


「さすが翠さん」と誉められたので、「どうも」と曖昧に頷いておいた。


「1週間、寝た。…お母さん髪切ってたり、1週間のうちに色々あって、人生変わった人もいるかもしれない。私だけ、この世界で見れなかった景色とか、与えられなかった喜びも、あったと思うんだけど」


朝くんは、この世界の1週間の7日間を、どのように生きていたんだろう。


「でも、このいつも見る道路も風景も変わらない。相変わらずひるの毛はついてるし、待っててくれたしで。朝くんも、なにも変わってないな。救われちゃったわ」

「…ほんと、大袈裟だから。毎回会う度に」


はぁ…とため息を吐く朝くんに、私は、笑わずにしっかり向き合って言った。


「ありが、とう」


朝くんはしばらく私をキョトンとした目で見つめた。それから、ふふっと笑みが漏れた。


「あーあ、翠さんも変わったな」

「…悪い、ほう?」

「ううん。グッドなほう」

「…死にたい目、してる?」

「ううん。この世界を生きたいって目してる。いや、翠さんは最初からそうだった。ずっと笑ってどうでもよさそうにしてたけど、本当は、…生きたいって目、してたんだよ」


私は精一杯に、またありがとうと言った。何度も何度も言った。