「幼なじみ…友達とかじゃないの?」

「まあ友達は表面上。親の仲がいいやら家も近いし。友達がいたら何かと便利だった」


…便利、か。

便利なんて考えながら友達になるのか。他人に興味の無さそうな朝くんと東花が話しているところなんて、全く想像できない。


「…あいつには気を付けろって。変なことされるぞとか、東花に言われたんだけど」


朝くんはなにそれ、と笑った。


「あいつ、多分ヤキモチやいてんな」

「え、やきもち?」

「まあ翠さんのこと心配してるっていうか。なんで俺じゃなくてあいつなんかと関わるんだーっ!!って、犬みたいに吠えてんの」


確かに犬みたいだな、なんて思ってしまった。でも犬みたいに人懐っこくはなさそう。


「夕はツンデレ不器用だから、まあそうやって、俺と翠さんを離したいんだろうな」

「…朝くんは、東花のこと大好きなんだね」

「…は?なんで」

「えじゃあ、嫌い?」


そう言うと、朝くんは黙って下を向いた。


「嫌いって、言わない」

「…俺が、沢山傷つけたからね」


傷つけたって…

彼は、自分の右手のひらをじっと見つめる寂しげな横顔に、調子に乗って色々言ってしまった自分に後悔する。