「………。」
無言で助手席に座り、親の車以外で車に乗ることなんて無くて、シートベルトに少しもたついてしまう。
でもそれは慣れない助手席のせいなんかじゃない。
「元気だったか?」
シートベルトをしたと同時に車を走らせて、電話と同じ質問をするまーちゃん。
「うん…。変わらない…かな。」
「そうか。お前の家◯◯町だろ?聞いたことあるけど詳しくは知らないからナビしろよ。」
あの時より少し伸びたまーちゃんの髪の毛。
眉毛も前より見えなくなって、チラリと見えた刺青は薄い黒のパーカーを着ていて見えていない。
右手でハンドルを持ち、左手は肘当てに乗せていて、車内のカーナビの光がやたらと眩しく感じる。
ここまでこの時間を過ごすのにどれだけの月日が流れただろうか。
でもこの空間も、どうやら私の家までの帰り道だけらしい。
車で10分もかからない距離に、もどかしさを感じるけど
やっぱりどこかで
諦めている私がいる。