「絃姉から聞いた。僕なんかのために頭下げたりして…、ばかだよユキちゃん」


「…それはシロちゃん、だよ」



ピクッと、反応した。



「私なんかのために危ないところに行って…、ばかだよ」


「…僕は本当は……、きみのお父さんを見つけてあげたかった」


「………うん」



わかっていた。

あの日、シロちゃんのポケットから写真が落ちた日。


そのとき、私はひとつの約束を思い出したんだ。


小さいときにシロちゃんと指切りした約束があったこと。



「でも、できなかった」


「……うん」



悲しさはないよ。

そっかって、それだけ。


お父さんが今どうなって、なにをしていて、誰といて。

なんにも分からないけど、私の心に残った確かな気持ちがあれば。



「でも、シロちゃんがいる」


「………、」


「ここにはシロちゃんがいてくれるよ」



来てくれたよ。
いつもシロちゃんは来てくれるの。

小さいときから、私に何かあると必ず飛んで来てくれる。