「…汐華さん、今日は本当にごめ───」
「ありがとう」
「……ごめ、」
「ありがとう」
「…………ありがとう」
うん、よろしい。
私は無事だった。
危なかったけど、なにもされていない。
千石くんと0の柵(しがらみ)が断ち切れて、本当にホッとしてるんだ。
「でも迎えは来るの…?」
「タクシー呼ぶ」
「あっ、千石くん…!海未ちゃんすごく心配してるだろうから、連絡くらいはしてあげて…?」
「…するよ。当たり前じゃん」
そう言って千石くんは倉庫を出ていった。
ポツンと残される私とシロちゃん。
私の乱れていた制服と不自由だった両手は、とっくにシロちゃんが直してくれた。
「わ……っ」
言葉よりも先に、抱きしめられる。
「…ごめん、ユキちゃん」
もういいの。
シロちゃんの「ごめん」を聞くと、すごく悲しくなるから。
そんなことを言わせてしまったことが、悲しくなる。