「もし今後、またこの子たちに近づいて危害を加えることがあったとしたなら。…わかってるわね?」
「……わかりましたよ。もう近づきませんし乱暴もしませんって」
そこまで従順な東を、俺は見たことがなかった。
奴らが全員跡形もなく去っていくと、女はずっと付けていたサングラスを取り外す。
「……ケガをしているわ」
そしてまずは俺に声をかけてくる。
俺は男だし、もっとひどい目に遭った汐華さんを最初は気にするべきだと思うのに。
なぜか俺を、心配してきた。
そこまで近寄らず、一定の距離感を保ちながら見下ろしてくる。
「こんなの…大したことないから」
「……そう」
誰なんだよ、あんたは。
俺と同じ特徴的な鼻をしていて、どこか、なにか、変な感じだ。
「あっ、待って、」
「…………」
すぐに背中を向ける女を、無意識にも引き留めてしまう。