「それだけじゃない。今回のことで、天鬼組(あまきぐみ)のカシラが動いたよ」



けれどそいつが汐華さんのところへ向かうよりも先に放った一言に、東は完全に降参だと両手をあげる。



「はい、ぜーいん退散退散」


「えっ、でも東さんこいつらを…!!」


「あのねえ、たかがイキりたいだけのクソガキ集団である俺たちが相手にしていい奴らじゃないから。無理。勝てない」


「そっ、そんなの東さんらしくねーっすよ……!!」


「らしくない?どこが。俺は実際かなりの現実主義で論理的思考の持ち主。俺が勝算のない戦いはしないの知ってるだろ。はーっ、どんな人間たちバックに付けてんだよ真澄くんは」



知らない。
とくに俺はあの女と親睦なんかない。

游黒街で数回顔を合わせたくらいで、とくべつ話してもいないし。


天鬼組が汐華さんを救う理由は分かるけど、なんであの女は俺を救ってくれたんだよ…。


東は何かを知っているようで、その女に太刀打ちなど最初から考えてもいないらしい。