「やっかましいねえ、さっきから。もうお涙ちょーだいはいらないんだよ。うるさいから指の1本くらい折っとこうか?」
「っ、や…、」
「やめろ東…ッ、わかった、俺は0にもど───」
「戻らないわ」
まさかここにまた別の女の声が響くとは思わなかったようで、東の笑顔は止まった。
倉庫の入り口、大きな扉の前。
どこかで見たことあるような女がいる。
「彼は戻らない。今後いっさい、関わらないでもらえるかしら」
サングラス女だ……。
俺が游黒街へ行くと必ず現れて、追い返してくるウザい女。
神出鬼没で素っ気なくて、かと思えば俺が完全に出口の先に行くまでを見つめてくるんだ、その女はいつも。
「あーー……、やっばいの来た」
東はやれやれといった余裕さを出してはいたが、冷や汗は確実に垂れていた。
その女の横に立つ、漆原 士郎。
目にした瞬間、汐華さんは名前を呼びながら泣いた。