「ぐ…ッ」


「甘かったね。そう簡単に抜け出せると思ったら大間違い」


「う…ッ、は……っ」



コンクリートに顔が押し潰される。


逃げろ、逃げろ、汐華さん。
俺なんか置いて、はやく。


俺は今まで汐華さんに最低なことばっか言って、最低なことばっかしてきたんだから。

こんなときくらい仕返したっていいんだよ。



「やめて……っ!」


「うわっ、もー、…大人しくしてろって」


「きゃ…ッ!!」


「っ!やめろ……!!」



そう、女にだって平気で手を上げるんだよこいつらは。

自分たちの利益のためならばどんな手だって使って、どんなことだってする。


もしここに、それ以上の権力を持った人間が現れれば話が変わってくるだろうけど。


そんなの……俺の人脈であるわけがないんだ。