「千石くんは私にとって…、すごく大切だから」
俺、汐華さんのこういうところが好きなんだ。
そんなの俺にとってもだよ。
俺は汐華さんと出会って、ありえないくらい人生が変わった。
「いやー、泣かせるねえ。いい話だ、素晴らしいよ。そりゃお互いに助けたくもなるよね、俺たちに頼んできたのも納得だ」
軽すぎる拍手。
なんの心にも響いていない感動が、忘れていた存在を動かした。
「だからさあ、真澄くん」
「───ガハ…ッ!!」
「千石くん……っ!!」
「お前もそんな都合いいことばっか、言ってくれるなよ」
腹に1発、東からの攻撃がめり込んだ。
ここまで来るに何人も相手していて、俺の体力が消費しきっている上での重い1発。
うずくまった俺に追い討ちをかけるものは、ぐしゃっとつぶすように頭を踏みつけてくる靴。