好青年のふりして近づいて、その純粋さを平気で騙して、この0という組織のために利用しようとしたんだよ。

何度も何度も俺に訴えかけてくれた汐華さんの気持ち無視してまで。



「だって…、お弁当、食べてくれたから」


「…は…?」


「私ね、小学校の運動会とか遠足とか…、仲のいい友達と分け合ったりするの…できなかったんだ」


「なんで…?」


「施設育ちの子のお弁当はって、やっぱりみんなちょっと気が引ける部分があったみたいで…」



関係ないだろ、そんなの。

トマトはトマト、ウインナーはウインナー、卵焼きは卵焼き。

そこに施設育ちとか、それだけの理由で食べてくれないって意味わかんないよ。



「でも千石くんはいつも必ず綺麗に食べてくれた。それね、すごく……嬉しかったんだ」



もう信じてもらえないかもしれないけど、あれは本当なんだ。

俺は本当に汐華さんが作ってくれたお弁当も、ひまわり園で保母さんたちが作ってくれたお弁当も、食事も。


ぜんぶ美味しかったし嬉しかった。